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会社とオーナー個人の取引をM&A前にどう整理する?役員貸付金・不動産・経費・関連会社を大阪の譲渡企業向けに解説

2026 10/09
コラム
2026年8月16日2026年10月9日
大阪の街と橋を背景に会社とオーナーの書類を分けて整理し引継ぎへつなぐ様子を表現したオリジナルイラスト

中小企業のM&Aでは、役員貸付金・借入金、個人所有不動産、親族給与、私的経費、関連会社取引、個人保証など、会社とオーナー周辺の関係整理が価格と引継ぎを左右します。売却準備から契約・決済までの実務を解説します。

目次

会社とオーナーが近いこと自体が問題なのではない

大阪・関西の中小企業では、創業者やその家族が資金、土地建物、人脈、知的財産、取引機会を会社へ提供し、事業を長年支えていることが珍しくありません。資金不足のときに社長が会社へ貸し付ける、会社の工場を社長個人の土地に建てる、親族が経理や総務を担う、といった関係には経営上の合理性があります。M&Aを検討したからといって、これらを一律に不適切と捉える必要はありません。

ただし、買い手は会社だけを引き継いだ後も同じ条件で事業を継続できるかを見ます。社長個人名義の倉庫を無償で使っている、関連会社から相場より安く仕入れている、私的利用を含む車両費が会社経費に混在していると、帳簿上の利益だけでは将来収益を読み取れません。関係を隠すのではなく、当事者、金額、条件、事業上の必要性、M&A後の扱いを説明できる状態にすることが重要です。

本稿では「関連当事者」を、オーナー、役員、親族、それらが支配する会社など、対象会社と特別な関係を持つ相手を広く指す言葉として使います。会計・会社法・税法上の厳密な範囲や規制はそれぞれ異なり、取引形態や会社規模でも判断が変わります。個別案件の法務・税務・会計・労務・登記は、弁護士、税理士、公認会計士、社会保険労務士、司法書士などへ確認してください。

なぜM&Aで関連当事者取引が詳しく確認されるのか

第一の理由は、正常な収益力を把握するためです。オーナーの私的経費が会社に含まれていれば利益は実態より低く見え、反対に個人所有不動産を無償使用していれば、買い手が負担する将来賃料を考えると実態より高く見えます。役員報酬が同規模企業と大きく異なる場合や、親族が実際の勤務に比べ高額または低額の給与を受けている場合も、譲渡後の人員配置と費用を組み直す必要があります。

第二は、資産と負債の範囲を確定するためです。役員貸付金は会社がオーナー等から回収すべき資産、役員借入金は会社がオーナー等へ返済すべき負債ですが、長期間動いていない残高や証憑の乏しい残高では、回収可能性や返済条件が問題になります。会社名義の保険、車両、会員権、社宅、土地が事業に必要か、譲渡企業が決済前に取り出すか、会社に残すかでも価格や税務が変わります。

第三は、取引継続とガバナンスを確認するためです。関連会社が主要顧客、仕入先、外注先、知的財産の保有者であれば、その関係がM&A後も続かなければ会社の価値が損なわれます。買い手は、口頭約束だけでなく契約、価格決定方法、解除条件、過去の支払実績を確認します。早い段階で全体像を示せれば、買い手は正常化調整と引継ぎ費用を分けて検討でき、終盤の不信や突然の値下げ協議を減らせます。

最初に作る「会社・個人・関連会社」の関係図

準備の出発点は、決算書の勘定科目だけを見ることではなく、人と会社の関係図を作ることです。対象会社の株主、取締役、監査役、実質的な経営関与者、同居親族・近親者、オーナー一族が出資または経営する法人を並べます。そのうえで、資金貸借、売買、業務委託、不動産賃貸、保証、担保、従業員の兼務、システム共用、知的財産利用などを矢印で結びます。

各矢印には、年間取引額、期末残高、契約の有無、支払頻度、価格の決め方、事業上の重要度、代替可能性を付記します。契約書がない場合は「なし」と記載し、推測で契約日や条件を作らないことが大切です。銀行口座、総勘定元帳、固定資産台帳、登記事項証明書、賃貸借一覧、給与台帳、法人カード明細、保険証券など、確認した資料もひも付けます。

関係図は買い手へそのまま出すためだけの資料ではありません。譲渡企業と顧問税理士、M&Aアドバイザーが、何を残し、何を解消し、何を新契約へ切り替えるかを相談するための地図です。最初から完璧を目指さず、判明した関係を更新します。ただし、親族会社や名義上の所有者を意図的に外すと、後のデューデリジェンスで説明の信頼性が損なわれます。実質的な関係を優先して洗い出してください。

役員貸付金は「返せば終わり」とは限らない

役員貸付金には、オーナーへの一時的な立替、仮払金の振替、個人的支出、グループ内資金移動などが混ざることがあります。まず相手別・発生日別の明細を作り、契約書、振込記録、利息、返済実績、使途を確認します。何年も同額のままなら、買い手は本当に回収できる資産か、実質的な分配ではないか、税務上の問題がないかを質問します。

決済前に返済する方法、譲渡代金と経済的に調整する方法、債権をオーナーへ移す方法などが検討されますが、自由に選べるとは限りません。返済原資、会社の分配可能額、債権譲渡の対抗要件、税務、他の株主や債権者への影響を確認する必要があります。帳簿上だけ相殺したり、根拠なく放棄したりすると、新たな論点を生むおそれがあります。

買い手が重視するのは、クロージング時に残高がゼロかだけではなく、過去に同様の資金流出が繰り返されていないか、経費承認の仕組みが整うかです。原因となった運用も改めます。法人カードの利用者と証憑提出期限を定め、仮払金を月次で精算し、個人利用口座との資金移動を止めます。是正後の数か月分の記録があれば、単発の掃除ではなく管理が定着したことを説明できます。

役員借入金は返済時期と価格への反映をそろえる

資金繰りを支えるため、社長が会社へ資金を入れ、役員借入金が積み上がる会社もあります。これは会社の負債であり、株式譲渡代金とは別の経済価値を持ちます。決済前に会社が返済するのか、買い手取得後も会社に残すのか、買い手または第三者へ債権を譲渡するのかを明確にしなければなりません。

譲渡企業が「自分のお金だから会社の預金から先に返してよい」と考え、買い手が「株式価格にすべて含まれている」と考えていれば、最終局面で金額が合わなくなります。企業価値から有利子負債等を控除して株式価値を算定する方式では、役員借入金をどの区分に含めるかが重要です。返済すると会社の現金も減るため、両側を一体で試算します。

返済期限や利息の合意が曖昧な場合、確認書や金銭消費貸借契約を整えることがあります。ただし、M&A直前に過去と異なる有利な条件をオーナーだけへ設定すると、買い手や税務当局から合理性を問われる可能性があります。作成日を遡らせず、事実と意思決定を正確に記録し、取締役会等の承認、利益相反、源泉・税務処理を専門家と確認します。

個人所有の土地・工場・店舗をどうするか

大阪府内の製造業、物流業、店舗事業では、会社が使う土地や建物を社長個人または親族が所有している例があります。買い手が事業を続けるには、株式を買うだけでなく、その不動産を安定して使える権利が必要です。所有者、登記、抵当権、賃貸借契約、賃料、敷金、修繕負担、保険、固定資産税、用途、許認可上の所在地を確認します。

選択肢は、不動産を会社または買い手へ売る、オーナーが保有したまま長期賃貸する、一定期間後の売買予約を設けるなどです。不動産を譲渡対象に含めれば資金額と税負担が増え、賃貸なら買い手は更新、解約、賃料改定、災害復旧、オーナー相続時の安定性を気にします。事業承継の目的、オーナーの老後収入、担保状況、買い手の投資方針を踏まえて検討します。

賃料が無償または著しく低いときは、M&A後の適正な賃料を収益計画へ反映します。逆に高すぎる賃料なら、正常水準への見直しが利益調整になる場合があります。ただし「相場」は立地、建物用途、設備、契約期間、修繕区分で変わります。不動産鑑定、仲介査定、近隣事例など複数の材料を用い、税務上の適正性も確認します。口約束のまま決済日を迎えず、賃貸借の開始日と株式譲渡の実行を連動させます。

私的経費と事業経費を分け、正常収益を説明する

オーナー企業では、車両、通信、旅行、会食、保険、社宅、会員権などに事業利用と私的利用が混在しやすくなります。M&Aの初期説明で「全部オーナー経費なので足し戻せます」と一括処理するのは危険です。買い手は、支出がなくても売上を維持できるか、後任社長にも必要か、従業員の福利厚生か、税務上適切に処理されているかを明細ごとに確認します。

正常化調整を行うなら、勘定科目、支払先、年間金額、事業目的、M&A後の扱い、根拠資料を一覧にします。社長車でも顧客訪問に必要なら全部を削れません。役員生命保険も、保障、退職金準備、解約返戻金、契約者・受取人によって扱いが異なります。交際費も社長個人の飲食と断定せず、顧客維持に必要な活動かを確認します。

過去の税務処理に疑問があれば、買い手へ見せる数字を作る前に顧問税理士へ相談します。証憑を破棄したり、説明に合わせて摘要を書き換えたりしてはいけません。事実に基づいて区分し、必要なら修正申告等の要否を専門家が判断します。売却準備を機に、法人カードの私的利用を停止し、費用精算規程と承認者を整えることは、買い手に引き継げる管理体制づくりにもなります。

親族給与・役員報酬・退職金は役割と条件を見える化する

親族が役員や従業員として働く会社では、肩書だけでなく実際の業務、勤務日数、権限、保有資格、顧客との関係を整理します。親族だから不要とは限らず、経理、採用、品質管理などを実質的に担うキーパーソンかもしれません。反対に、勤務実態が限定的なら、M&A後も同じ報酬を負担する前提にはなりません。

買い手は、誰が退任し、誰が残るか、退任者の業務を誰が引き継ぐか、その代替人件費はいくらかを収益計画へ入れます。オーナー報酬を全額足し戻して利益を高く見せても、後任社長を採用する費用が必要なら調整が戻されます。残留する親族の職務、雇用形態、給与、指揮命令系統は、他の従業員との公平感にも配慮して決めます。

役員退職金を決済前に支給する場合、金額の相当性、株主総会等の手続、会社の資金繰り、税務、譲渡価格との二重計上を確認します。退職慰労金規程があるから自動的に確定するとは限りません。支給後に運転資金が不足すれば事業価値を損ないます。退任日、顧問期間、競業避止、引継ぎ義務と合わせ、税理士、弁護士、社労士等の助言を受けて設計してください。

関連会社との売買・外注・共通費を独立後の条件へ直す

対象会社とオーナーの別会社との間で、仕入れ、販売、製造委託、人材派遣、管理業務、システム、倉庫などを共用している場合があります。連結グループ内では効率的でも、対象会社だけを売却すると関係が切れます。取引額だけでなく、商品・役務の内容、数量、単価、支払条件、返品、品質保証、知的財産、顧客窓口を確認します。

共通費の配賦にも注意します。経理担当者や基幹システムを関連会社と共有し、対象会社に十分な費用が配賦されていなければ、独立後に追加コストが生じます。逆に、根拠なく多額の本部費を負担していれば、正常化後の利益は改善する可能性があります。人数、利用量、売上、床面積など、配賦基準と過去の一貫性を示します。

クロージング後も一定期間サービスを続けるなら、移行サービス契約で業務範囲、料金、期間、サービス水準、データ保護、再委託、障害対応、終了支援を定めます。「今までどおり助ける」という約束だけでは、担当者の退職や関係悪化に耐えられません。恒久的に取引を続ける場合は、第三者間でも合理的な価格と解除条件に改め、関連会社側の取締役会や金融機関の承認も確認します。

商標・ドメイン・電話番号・ノウハウの名義を確認する

社名や商品名の商標、ウェブサイトのドメイン、代表電話、SNSアカウント、製品図面、写真、ソフトウェアが、会社ではなく社長個人や関連会社名義になっていることがあります。現場では問題なく使えていても、買い手は会社が継続利用できる法的根拠を求めます。登録名義、契約者、支払口座、管理ID、二要素認証、制作委託契約を一覧化します。

会社へ譲渡する場合は、対象権利、対価、移転手続、税務、第三者の同意を確認します。許諾で残すなら、利用範囲、期間、独占性、改変、再許諾、終了時の扱いを定めます。特にドメインやクラウド管理者が社長個人のメールに結びついていると、決済後の運営が止まる危険があります。共有パスワードをメールで渡すだけでなく、管理者権限の移行と復旧先変更をテストします。

ノウハウは登記簿で確認できません。製造条件、見積方法、仕入先との調整、顧客別の注意点など、オーナーの頭の中にある情報を手順書と引継ぎ面談へ落とします。一方、第三者から秘密保持義務を負って受け取った情報は勝手に移転できない場合があります。誰の情報か、M&Aで共有可能かを確認し、個人情報の取扱いはプライバシーポリシーおよび個別の契約・法令に沿って専門家へ相談してください。

個人保証・担保・保険を決済日の動きに落とす

会社借入、リース、賃貸借、仕入取引でオーナーや親族が保証人となり、個人不動産を担保提供していることがあります。株式を譲渡しても保証は自動的に外れません。譲渡企業は債権者、契約番号、残高、保証人、担保、解除条件を一覧にし、いつ誰が金融機関へ相談するかを買い手と決めます。

理想は決済と同時に解除・差替えを行うことですが、金融機関の審査や登記に時間がかかる場合があります。解除をクロージング前提条件にするのか、買い手の決済後の努力義務にするのかで譲渡企業のリスクは大きく違います。「銀行担当者が大丈夫と言った」だけでなく、承認条件、返済、保証差替え、解除書類、費用を確認します。保証が残る期間の情報提供や追加借入制限を契約で設けることも検討されます。

オーナーを被保険者とする生命保険、キーマン保険、損害保険も、契約者、受取人、解約返戻金、質権、保険目的を確認します。決済前の解約、名義変更、会社への残置で現金・税務・保障が変わります。保険会社、金融機関、税理士と手順を合わせ、無保険期間を作らないようにします。一般的な相談の進め方はご利用案内もご覧ください。

株式譲渡と事業譲渡で整理の意味が変わる

株式譲渡では、株主が変わっても対象会社という法人は原則として存続します。そのため、会社が持つ資産・負債・契約や、会社に対する役員貸付金・借入金も、別途処理しない限り会社に残ります。オーナー個人との賃貸借や関連会社との取引も、契約相手が対象会社であれば自動的には消えません。ただし、支配権変更による解除・通知・同意条項があれば対応が必要です。

事業譲渡では、買い手へ移す資産、負債、契約、従業員を個別に選びます。譲渡企業会社とオーナーの貸付金を移さず、事業に必要な設備や在庫だけを移す設計も可能ですが、契約上の地位、債務引受、従業員の転籍、不動産、許認可には個別の同意や手続が必要になり得ます。消費税、不動産取得、法人側に残る譲渡代金の取扱いなど、株式譲渡とは税務・資金の流れも異なります。

会社分割を利用する場合や、不要資産を別会社へ移してから株式を譲渡する場合もあります。しかし、組織再編は時間、債権者保護、許認可、登記、税制適格性などの検討が必要です。「関連当事者取引が多いから事業譲渡にすれば簡単」とは限りません。まず譲渡企業が残したいもの、買い手が必要なもの、許認可・契約の移転可能性、税引後手取り、従業員への影響を比較します。

どのスキームでも、関係を正確に把握する作業は共通です。取引形態を決める前に、資産・負債・契約・人員・名義・保証を一覧化し、複数案で決済後の姿と資金の流れを図にします。スキームの法的・税務的な優劣は個別事情に大きく左右されるため、早い段階でM&Aアドバイザーと専門家を交えて検討してください。

M&A相談事例:加工会社と経営者個人・関連会社の関係整理

以下は、当社に実際に寄せられたご相談をもとに、守秘義務および個人・企業の特定防止に配慮し、内容の一部を加工・再構成した相談事例です。 金属加工会社から、社長個人が所有する工場用地、役員貸付金と役員借入金、社長の別会社が担う営業事務や配送を、承継に向けてどう整理するかというご相談がありました。会社単体の利益だけでは、承継後に必要となる費用や利用権を説明しにくいことが課題でした。

相談では、関係図と取引明細を用意し、土地の賃料水準と長期賃貸する場合の条件を確認する方針を整理しました。役員貸付金は使途と返済能力を、役員借入金は返済時期や株式価値の計算との関係を確認し、専門家の助言を受けて契約条件を検討することとしました。

関連会社の事務業務を移行期間中に利用する場合の範囲や、自社側の担当者育成、配送の外部見積りと継続契約の条件も検討事項としました。利益を良く見せることより、必要コストと利用権を明らかにし、承継後の運営を具体的に説明するための相談です。実際の処理や税負担は個別事情で異なります。

売却準備から決済までの進め方

公開前に一つずつ確認する

第一段階は洗い出しです。直近三期程度の総勘定元帳から、役員・株主・親族・関連会社名の取引を抽出し、固定資産、契約、口座、給与、保険、保証と照合します。会計帳簿に出ない無償利用、口頭契約、兼務、アカウント共用も経営者と実務担当者へ聞き取ります。金額が小さいから除外するのではなく、事業継続への重要性も見ます。

第二段階は分類です。「決済前に解消」「会社に残す」「新しい契約に置換」「一定期間だけ継続」「買い手と要協議」に分けます。それぞれ担当者、期限、必要な専門家、必要資金、税務、相手方同意を管理表へ入れます。価格算定に関わる調整と、決済条件として必要な手続を混同しないようにします。

第三段階は開示と合意です。ノンネーム段階では特定につながる情報を抑え、秘密保持契約後、買い手の検討に必要な粒度で段階的に開示します。基本合意、デューデリジェンス、最終契約の各時点で、未解決事項と解決期限を更新します。第四段階は実行確認です。返済、債権譲渡、賃貸借開始、保証解除、名義変更を、誰がどの証拠で完了確認するか決めます。単に仕訳を入れただけで終わらせず、銀行明細、契約原本、登記、アカウント権限まで確認します。

譲渡企業オーナー向け実務チェックリスト

【人と法人】株主・役員・親族・関連会社の一覧がある。実質的な支配・関与も記載した。兼務者の所属、業務、給与負担を整理した。退任者と残留者、その引継ぎを決めた。

【資金】役員貸付金・借入金を相手別、発生日別に確認した。仮払金・立替金・未収入金に関連当事者分がないか見た。利息、返済期限、返済実績、契約書を確認した。決済前返済が運転資金と価格に与える影響を試算した。

【資産・利用権】会社が使う土地建物、車両、設備、知的財産、電話、ドメインの名義を確認した。個人・関連会社名義なら売却後の利用条件を決めた。担保、質権、共有、第三者同意を確認した。

【損益】オーナー関連経費を明細化し、事業上必要なものと私的なものを根拠付きで分けた。役員報酬・親族給与と後任人件費を比較した。無償または相場と異なる賃料、外注費、売買価格を確認した。正常化調整を買い手に断定せず説明できる。

【契約・統制】関連当事者取引の契約、承認、請求、支払記録がある。法人カード、印章、振込、費用精算の権限を見直した。決済前の解消事項と決済後の移行サービスを区別した。法務・税務・労務・登記の担当専門家と期限を決めた。

チェック結果には、未確認を「該当なし」と書かないことも大切です。確認した人、資料、基準日を記録し、未確認事項には次の確認方法と期限を付けます。金額が確定していなくても、存在と想定範囲を先に共有すれば、買い手と調査方法を相談できます。決済直前まで月次残高と新規取引を更新し、最終契約の開示資料と実際の状態がずれないようにしてください。

よくある失敗と、その直し方

よくある失敗の一つは、関連当事者取引を「身内の話だから買い手には関係ない」と考えることです。実際には、会社の収益、資産、契約、継続性に関係する限り重要です。守秘範囲を管理しつつ、関係と金額を早めに示します。二つ目は、利益を高く見せるため、あらゆるオーナー関連費を足し戻すことです。後任経営者や代替サービスに必要な費用を差し引き、再現可能な正常収益として説明します。

三つ目は、デューデリジェンスが始まってから急いで残高を消すことです。不自然な返済、相殺、資産移転は、資金流出や税務リスクとして新しい質問を招きます。解消前に買い手と専門家へ方針を共有し、価格と契約への影響を確認します。四つ目は、個人不動産を「ずっと貸す」と口頭で約束するだけの状態です。相続、売却、修繕、賃料改定が起きても事業を続けられる契約を作ります。

五つ目は、少額取引だけに注目し、無償の支援を見落とすことです。社長個人の信用、関連会社の人員、無償システム、顧客紹介がなくなれば、大きな追加費用が出るかもしれません。六つ目は、是正を一度行って満足することです。月次締め、承認、明細保存まで運用を定着させます。買い手にとって価値があるのは、きれいな一日の残高だけでなく、再発を防ぐ仕組みです。

FAQ:関連当事者取引でよくある質問

【Q1 役員貸付金があると会社は売却できませんか】存在だけで売却できないとは限りません。ただし、回収可能性、発生原因、税務、決済時の扱いを明確にする必要があります。放置せず、明細と解消案を準備してください。

【Q2 社長個人の土地は必ず会社へ売る必要がありますか】必ずではありません。買い手への売却、会社への移転、長期賃貸などが考えられます。事業継続、資金、税務、担保、相続を踏まえ専門家と選びます。

【Q3 オーナーの経費はすべて利益へ足し戻せますか】すべてとは限りません。事業継続に必要な支出、後任者の費用、税務上の扱いを確認し、根拠のある項目だけを正常化候補として説明します。

【Q4 親族従業員はM&A前に退職させるべきですか】一律ではありません。実際の役割、本人の希望、買い手の組織計画、雇用契約を確認します。不利益変更や退職の強要にならないよう、社労士・弁護士へ相談してください。

【Q5 関連会社との契約書がありません。今から作れますか】将来に向けた契約整備は可能ですが、過去の日付へ遡った契約を作るべきではありません。過去の実態は請求書や入出金記録で説明し、現在以降の条件を正確に合意します。

【Q6 買い手へいつ開示すべきですか】匿名段階で会社が特定される情報は抑えつつ、価格や継続性に重要な関係は秘密保持契約後の適切な時点で開示します。終盤まで隠すほど交渉への影響が大きくなります。

【Q7 役員借入金は株式譲渡代金と別に受け取れますか】価格算定と最終契約の設計によります。二重に受け取る、または意図せず放棄することがないよう、株式価値と債権の扱いを一体で確認します。

【Q8 保証解除を買い手が約束すれば安心ですか】債権者の同意がなければ解除できないのが通常です。前提条件、期限、代替措置、解除証拠を確認し、弁護士や金融機関と調整してください。

まとめ:会社単独で事業が続く姿を示す

関連当事者取引の整理で目指すのは、オーナーの痕跡をすべて消すことではありません。会社が何を所有し、誰から何を借り、どの費用で運営し、M&A後にどの契約が必要かを、買い手が再現できるようにすることです。役員貸付金・借入金、不動産、経費、親族人事、関連会社、知的財産、保証を一枚の関係図と管理表へまとめると、価格、契約、引継ぎの議論がつながります。

早めの整理には、買い手のためだけでなく譲渡企業の利点があります。正常な収益力を根拠付きで説明でき、決済直前の資金移動や税務問題を避け、保証や個人資産を残したまま引退するリスクを減らせます。解消に時間がかかる関係も、先に把握すれば賃貸借、移行サービス、段階的返済など現実的な選択肢を比較できます。

大阪M&A総合センターでは、まだ売却を決めていない段階から、会社とオーナー周辺の関係、必要資料、秘密保持、買い手への伝え方を整理するご相談を承っています。会社譲渡をご検討の方は譲渡企業様向けお問い合わせ、買収をご検討の企業様は譲受企業様向けお問い合わせをご利用ください。個別の法務・税務・会計・労務・登記の最終判断は、案件を把握した各分野の専門家と連携して進めてください。

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大阪M&A総合センター 編集部のアバター 大阪M&A総合センター 編集部 株式会社M&A Do運営・M&A実務編集

株式会社M&A Doが運営する大阪M&A総合センター編集部です。中小企業の会社売却・事業承継・M&A実務について、中小企業庁・各自治体などの公的資料と、譲渡準備で確認されやすい実務論点をもとに解説します。記事は公開後も制度・実務情報を確認し、必要に応じて更新します。

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