長年会社を経営していると、資金が足りない月に社長個人が会社へ入金したり、反対に会社が社長の支出を一時的に立て替えたりすることがあります。創業期や資金繰りが厳しい時期には自然な対応でも、年月がたつと「役員借入金」「役員貸付金」「仮払金」などの残高だけが決算書に残り、いつ、なぜ、誰が負担したお金なのかを説明しにくくなります。M&Aでは、会社の株式をいくらで譲るかだけでなく、会社と現オーナーとの債権債務をクロージングまでにどう扱うかが重要です。
とりわけ大阪・関西の中小企業では、社長が機動的に運転資金を補う、家族役員が経費を立て替える、法人と個人が同じ金融機関を利用するといったケースが珍しくありません。それ自体が直ちに問題というわけではありません。しかし買い手から見ると、残高の根拠が不明なままでは実質的な有利子負債や回収困難な資産が隠れていないか、譲渡後に元オーナーから返済請求を受けないか、税務上の論点がないかを判断できません。説明不足は価格調整、追加資料、契約交渉の長期化につながります。
本稿では、役員借入金と役員貸付金の違いから、残高確認、選択肢の比較、買い手・金融機関への説明、最終契約への反映までを実務の順番で整理します。本文中の相談事例は、当社に実際に寄せられたご相談をもとに、相談者や企業を特定できないよう一部加工・再構成しています。一般的な制度説明や計算例とは区別して掲載しています。債権放棄、相続、税務処理、会社法上の手続、金融機関との契約は個別事情で結論が変わるため、最終判断は税理士、弁護士、公認会計士、金融機関などの専門家へ確認してください。
役員借入金と役員貸付金は似ていても意味が反対
役員借入金は会社が役員から借りている負債
役員借入金は、原則として会社から見た負債です。社長が個人口座から仕入代金や給与を補填した、会社経費を個人カードで払い未精算になっている、家族役員が運転資金を入れた、といった取引が積み上がります。決算書に一千万円の役員借入金があれば、会社が役員へ一千万円を返す義務を負っている可能性があります。株式譲渡代金とは受取人も法的性質も異なるため、「会社を売れば借入金も自動的に売却代金へ含まれる」とは限りません。
買い手は、役員借入金を銀行借入と同様のネットデットとして企業価値から控除するのか、クロージング前に返済するのか、買い手が引き継いで将来返済するのかを検討します。ただし名称だけで判断せず、金銭消費貸借契約、入出金記録、利息、返済実績、返済期限を確認します。役員報酬の未払いや立替経費が混在している場合は、勘定の内訳を分ける必要があります。
役員貸付金は会社が役員へ貸している資産
役員貸付金は、会社から見れば役員に対する債権です。帳簿上は資産でも、買い手は額面どおり回収できるかを見ます。社長個人の住宅関連費、私的支出、使途不明の引出しが長期間残っていれば、事業に使える現預金ではなく、回収可能性の低い資産と評価されることがあります。利息を取っていない、返済期限がない、返済実績がない場合は、税務上の取扱いを含め追加確認が必要です。
「役員貸付金は資産だから会社の価値を上げる」と単純には言えません。回収可能性が低ければ、正常運転資本や実質純資産の調整対象となり得ます。クロージング前に役員が会社へ返済する、役員退職金や配当等との関係を適法に整理する、株式譲渡契約で精算条件を定めるなどの候補がありますが、相殺や税務処理が当然に認められるとは限りません。会社法、税法、契約条件を専門家と確認します。
仮払金・未収入金・立替金にも同じ論点が潜む
勘定科目が役員貸付金でなくても安心はできません。仮払金、未収入金、立替金、前渡金、雑収入や現金勘定の中に、実質的な役員との資金往来が含まれることがあります。買い手のデューデリジェンスは勘定科目名より実態を確認します。総勘定元帳から相手先、発生日、摘要を抽出し、役員・親族・関係会社に関係する項目を横断して照合することが重要です。
M&Aでこの残高が重要になる五つの理由
企業価値と株式価値の橋渡しに影響する
M&Aの価格議論では、事業そのものが生み出す価値から、有利子負債を差し引き、余剰現預金などを加減して株式価値を考える方法があります。役員借入金をどこまで有利子負債相当として扱うか、役員貸付金を現金同等物として評価できるかによって、譲渡企業の手取り見込みは変わります。初期の希望価格だけで判断せず、株式代金、役員借入金の返済、アドバイザー費用、税負担、個人保証解除までを一つの資金表にします。
例えば事業価値が二億円でも、銀行借入五千万円、役員借入金二千万円、余剰現預金一千万円を調整すれば、単純な株式価値は別の数字になります。実際の定義や計算は案件ごとの基本合意や最終契約に従います。譲渡企業と買い手が「借入金」という言葉を別の意味で使うと、終盤に数千万円の認識差が出ることもあるため、計算式と基準日を早期に文書化します。
クロージング当日の資金移動に影響する
株式譲渡代金は買い手から株主へ支払われます。一方、役員借入金を返済する場合は会社から債権者である役員へ支払うのが基本です。資金の出し手、振込口座、支払時刻、条件が異なります。会社の預金で返済すれば譲渡時の現預金残高が減るため、価格調整との二重計上を避けなければなりません。買い手資金を会社へ増資・貸付し、その資金で返済する設計もあり得ますが、契約と送金手順を揃える必要があります。
デューデリジェンスでガバナンスを見られる
役員との資金往来は、内部統制や経理規律を映します。残高があること自体より、根拠資料がない、社長個人と会社の支出が混ざる、毎期同じ説明で増加する、税理士の確認事項が放置されている、といった状態が懸念されます。反対に、発生日別の明細、証憑、契約、返済方針が整っていれば、過去の事情を率直に説明しつつ改善可能性を示せます。
税務・法務・相続の論点が連動する
役員借入金の債権者が創業社長だけとは限りません。配偶者、親、先代社長、相続人、関係会社が名義人の場合があります。債権者が亡くなっていれば相続財産に含まれていたか、遺産分割や相続税申告と整合するかの確認が必要です。債権放棄を検討すれば会社側の債務免除益、株主間の価値移転などが論点になり得ます。役員貸付金の免除や低利貸付も給与課税等を含む検討が必要で、自己判断で仕訳だけを消すことは避けます。
金融機関の同意や説明に影響する
銀行借入の契約に財務制限条項、配当や役員への返済制限、支配権変更条項がある場合、役員借入金の返済やM&Aに事前承諾が必要なことがあります。役員借入金が実質的な資本性資金として見られていた場合、返済によって会社の財務耐久力が下がると金融機関が判断する可能性もあります。担当者へいつ、誰が、どこまで話すかは秘密保持と両立させ、M&A支援者と段取りを決めます。
最初の作業は残高を「人・日付・理由」に分解すること
三期分の決算書だけでなく元帳と通帳を照合する
まず直近三期程度の貸借対照表と勘定科目内訳明細書を並べ、期首、増加、返済、期末残高を確認します。次に総勘定元帳を取引単位へ分解し、通帳、振込控え、領収書、クレジットカード明細、経費精算書と照合します。金額が一致しない場合、決算整理仕訳、複数役員の合算、古い会計システムからの繰越を疑います。会計データを上書きせず、調査用の別表を作ると履歴を保てます。
確認表には、取引日、金額、貸し手・借り手、資金使途、振込口座、証憑、契約書、利率、返済期限、返済履歴、会計処理、税務申告上の扱い、確認担当者を設けます。「社長分」と一括せず、本人、配偶者、先代、子、関連会社を分けます。同姓の家族がいる場合は氏名だけでなく続柄や当時の役職も記録します。
本当に債権債務が存在するかを確かめる
帳簿残高がそのまま法的な債権額とは限りません。返済済みなのに仕訳が漏れた、経費精算を借入金へ振り替えた、役員報酬の未払分を含めた、個人名義で取得した資産代金が混じった、時効や債権放棄の主張があり得るなど、実態はさまざまです。契約書がなくても直ちに債権がないとは言えませんが、当事者の認識と客観資料を合わせて確認します。
残高確認書を作り、会社と役員の双方が基準日時点の金額を確認する方法もあります。ただし確認書への署名が新たな法的効果や時効に影響する可能性もあるため、疑義がある案件では弁護士へ相談して文面を決めます。先に都合のよい金額へ帳簿を修正するのではなく、事実確認、専門家判断、修正仕訳の順に進めます。
通常運転資金と私的利用を区別する
会社のための立替と私的利用は、買い手の受け止めが異なります。仕入先への緊急送金、従業員給与、設備修理など会社目的の支出は、背景を説明しやすいでしょう。一方、使途不明の現金引出し、個人保険料、家族旅行、個人住宅費などが会社負担になっていれば、返済だけでなく過年度の税務処理も確認します。会社所有車や社宅のように事業利用と私的利用が混在する場合は、利用規程や負担割合を整理します。
役員借入金を整理する主な選択肢
クロージング前に会社が返済する
会社に十分な余剰資金があり、金融機関との契約や事業継続に支障がなければ、譲渡前に全額または一部を返済する案があります。利点は買い手が引き継ぐ関係を減らせることです。ただし返済後も給与、仕入、税金を払えるか、必要運転資金を割り込まないかを十三週程度の資金繰り表で確認します。価格算定に含まれた現金を返済に使えば、株式価値の調整が必要になる場合があります。
クロージング時に同時精算する
買い手からの株式代金支払と同日に、会社から役員借入金を返済する方法です。会社に資金が不足する場合、買い手による会社への貸付などと組み合わせることがあります。送金が一つ遅れると前提が崩れるため、クロージングメモに口座、金額、実行順序、着金確認者を記載します。株式譲渡実行の条件なのか、実行後の義務なのかも契約で明確にします。
買い手の了承を得て会社に残す
返済を急ぐと運転資金が不足する場合、残高を会社に残し、譲渡後に分割返済する選択肢もあります。買い手は元オーナーが会社の債権者として残ることを懸念するため、返済期限、利率、劣後性、期限の利益、相殺、譲渡制限を合意します。銀行借入との優先順位や金融機関の承諾も確認します。社長が退任後も請求権を持つため、連絡窓口と紛争解決条項も必要です。
債権放棄や資本への振替を検討する
債権者が返済を求めず財務改善を優先する場合、債権放棄や現物出資等が候補になることがあります。しかし債務免除益、欠損金、株主間の利益移転、登記、株主総会手続、金融機関評価など多くの論点があります。形式だけ整えても税務上の合理性が認められるとは限りません。M&A直前の実行は価格への影響も大きいため、税理士・弁護士・司法書士等が連携して検討します。
役員退職金などとの関係を整理する
オーナー社長の退任に伴い役員退職金を支給する計画があると、借入金返済、退職金、株式代金の三つが並びます。役員退職金には支給根拠、株主総会決議、金額の相当性、源泉徴収などが関係します。借入金との相殺を考える場合も、互いの債権の存在、弁済期、意思表示、会計・税務処理を確認します。「同じ人への支払だからまとめる」という処理はせず、それぞれの法的性質と計算書を分けます。
役員貸付金を整理する主な選択肢
役員が会社へ現金で返済する
最も説明しやすいのは、役員が自己資金で会社へ返済し、通帳と領収記録を残す方法です。ただし個人資金の原資が別の借入であれば、その負担可能性も考える必要があります。会社から新たに資金を出して循環させるような処理は実質を伴いません。返済額が大きい場合は、一括か分割か、利息をどう精算するかを税理士と確認します。
報酬・配当・退職金との精算を検討する
会社から役員へ適法に発生する報酬、配当、退職金等がある場合、相殺を検討することがあります。しかし役員報酬の改定時期、配当可能額、機関決定、源泉税、社会保険、退職金の相当性など、それぞれ固有の要件があります。帳簿上だけで貸付金を消すと、後日税務調査や買い手監査で説明できません。決議書、計算書、納税記録、相殺合意書を一貫させます。
株式譲渡代金から返済資金を確保する
役員が株主でもある場合、クロージングで受け取る株式譲渡代金の一部を会社への返済に充てる設計が考えられます。買い手から株主への支払と、株主から会社への返済は別送金として記録するのが基本的に分かりやすいでしょう。エスクローや同時送金の要否、譲渡代金が予定より減額された場合の不足、税金支払資金を考慮します。
回収不能として処理する案は慎重に扱う
役員に資力がないからといって、会社が容易に債権を放棄できるわけではありません。買い手は、本来回収できた会社資産を旧オーナーのために失わせたのではないかと考えます。税務上も寄附金や給与等の問題が生じ得ます。回収可能性、法的手続、取締役の責任、少数株主や債権者への影響を弁護士・税理士と検討し、買い手へ事前に開示します。
買い手へ伝える資料は一枚の残高表から始める
残高推移と発生原因を短く説明する
説明資料は、役員別・勘定別に直近三期の期末残高を並べ、当期増減と理由を記載します。例えば「感染症流行期の運転資金補填」「本社移転時の敷金立替」「個人カード利用分の未精算」のように、事実を簡潔に示します。悪く見えない表現を探すより、裏付け資料と改善策を添える方が信頼につながります。未確認事項は「確認中」とし、推測を確定情報として書かないことが大切です。
企業価値計算との対応表を作る
役員借入金・貸付金が価格計算のどこに入るかを一枚にします。基準日の帳簿残高、デューデリジェンス調整額、クロージングまでの増減見込み、最終精算額を列にすると、二重控除や計上漏れを防げます。現金、銀行借入、未払税金、役員退職金など関連項目も併記します。計算式の名称だけでなく、正負の符号と具体例を確認します。
開示資料と表明保証を一致させる
最終契約では、計算書類の正確性、簿外債務、関連当事者取引、税務などについて表明保証を求められることがあります。役員借入金の債権者や貸付金の回収条件を開示資料へ正確に記載し、契約本文と矛盾しないようにします。既に買い手へ口頭説明しただけでは十分でない場合があります。開示資料の範囲や効果は契約文言によるため、弁護士の確認を受けます。
大阪・関西のオーナー企業で起こりやすい実務上の注意
家族役員と先代分をまとめない
家族経営では、父である先代、母である監査役、現社長、配偶者がそれぞれ資金を出していることがあります。会計上「社長借入金」に集約されていても、実際の債権者が異なれば返済先も相続関係も異なります。先代名義のまま残る場合は、相続人や遺産分割資料を確認します。親族間の了解だけに頼らず、第三者が追跡できる形にします。
会社と個人の不動産取引を切り分ける
大阪市内の店舗、東大阪・八尾の工場、堺・泉州の倉庫など、オーナー個人が不動産を所有し会社へ賃貸しているケースがあります。敷金、修繕費、固定資産税、建物附属設備の負担が役員勘定へ入っていることがあります。M&A後も賃貸を続けるなら、貸付金等の精算と新しい賃貸借条件を別々に合意します。賃料改定を借入金返済の代替にする場合も税務・法務の検討が必要です。
地元金融機関との長い関係を丁寧に扱う
社長個人の預金、会社融資、個人保証、役員借入金が同じ金融機関との関係の中で成り立っている場合があります。M&Aを突然伝えると、返済や保証解除の前提を金融機関が確認できません。秘密保持に配慮しつつ、基本合意後、最終契約前、クロージング前のどの時点で説明するかを計画します。担当者だけでなく審査部門の確認期間も見込みます。
M&A相談事例:東大阪の部品加工会社で役員借入金と貸付金の内訳を整理
以下の相談事例は、当社に実際に寄せられたM&A・事業承継のご相談をもとに、相談者や企業を特定できないよう、内容の一部を加工・再構成して掲載しています。相談時の課題や検討内容をご紹介するものであり、個別案件の成約や同様の結果を保証するものではありません。 東大阪の部品加工会社から、創業経営者の引退に伴う株式譲渡のご相談がありました。経営者からの役員借入金と、経営者への役員貸付金について、差引残高だけで返済条件を決めず、それぞれの発生原因と根拠を確認することが課題でした。
設備導入時の入金、給与補填、先代経営者に関する名義、未払役員報酬からの振替を、元帳や通帳と照合する対象として整理しました。貸付金側では、個人支出、会社の修理費用を個人名義カードで精算した取引、証憑が不足する取引を区別し、仕訳と実際の資金移動の対応を確認する方針です。
税理士との元帳・通帳の照合、弁護士への先代分の債権者確認、誤仕訳の修正や返済が必要となる条件を検討事項としました。借入金は債権者別に分け、会社の運転資金を残せる範囲を確認する方針です。クロージング時の返済、株式価値の計算、承継後の返済条件をどう組み合わせるかも、候補先と検討する事項として整理しました。
この相談では、借入金と貸付金を機械的に相殺せず、債権者、発生原因、法的性質、税務処理を分けることを重視しました。候補先への説明と決済時の送金計画に向け、確認済みの残高と根拠が不足する部分を区別するためです。実際の案件で同じ処理が適切とは限らないため、個別に専門家確認が必要です。
準備からクロージングまでの進め方
第一段階:匿名相談前に概算を把握する
最初から完璧な証憑をそろえる必要はありません。直近三期の決算書、科目内訳、元帳を用意し、誰との残高か、概算いくらか、増えているか減っているかを把握します。社内でM&Aを知る人を増やさないため、経理担当者へ依頼する範囲やデータ保管場所を決めます。外部支援者へ共有する際は秘密保持とアクセス権限を確認します。
第二段階:候補先探索中に根拠資料を整える
買い手候補との面談前後に、取引別明細と証憑を整えます。未確定項目は専門家へ照会し、回答予定日を管理します。この段階で無理に残高をゼロにすると資金繰りや税務に悪影響が出る可能性があります。まず複数の整理案と各案の会社資金、株主手取り、税金への影響を比較します。
第三段階:基本合意からDDで価格定義を固める
基本合意書では、希望価格が現預金・借入金を含むか、役員勘定をどう扱う想定かを確認します。デューデリジェンスでは質問へ迅速に回答し、追加資料の履歴を残します。買い手の調整提案を受けたら、単に減額かどうかでなく、役員借入金返済との二重控除、基準日後の増減、正常運転資本との関係を検算します。
第四段階:最終契約と送金表を一致させる
最終契約には、株式代金、価格調整、役員借入金の返済、役員貸付金の返済、前提条件、表明保証、補償を反映します。別紙の残高表とクロージング送金表の数字が一致するか、振込手数料や源泉税を含めて確認します。金融機関の同意、担保・保証解除書類、株券や議事録など他のクロージング書類との実行順序も統合します。
役員勘定の整理チェックリスト
会計・証憑
- 直近三期の決算書、勘定科目内訳、総勘定元帳を並べたか
- 役員借入金、役員貸付金、仮払金、立替金、未収入金を横断確認したか
- 取引日、金額、相手、資金使途、証憑の一覧を作ったか
- 会社通帳と個人口座の該当入出金を照合したか
- 誤仕訳は根拠と専門家確認を経て修正したか
法務・税務
- 債権者・債務者の本人を特定したか
- 契約書、利率、返済期限、返済履歴を確認したか
- 先代や故人の残高について相続関係を確認したか
- 返済、相殺、放棄、資本振替の税務影響を確認したか
- 株主総会・取締役会など必要な機関決定を確認したか
M&A・資金繰り
- 株式価値計算における役員勘定の扱いを明文化したか
- 返済後も必要運転資金を維持できるか
- 銀行借入契約の制限や承諾事項を確認したか
- 買い手への開示資料と最終契約が一致しているか
- クロージング当日の口座、金額、順序、確認者を決めたか
- 個人保証解除や担保抹消と同じ工程表で管理しているか
よくある質問(FAQ)
Q1. 役員借入金が多い会社は売却できませんか?
残高が多いだけで売却できないとは限りません。買い手が重視するのは、発生原因、債権者、返済条件、価格への反映、譲渡後の事業資金です。資料が整い、実行可能な整理案があれば交渉できます。返済を急いで資金不足を起こさないようにします。
Q2. 役員借入金は株式譲渡代金に上乗せされますか?
自動的に上乗せされるわけではありません。株式代金と会社の借入返済は別の債権関係です。企業価値から負債として控除したうえで別途返済するのか、会社に残すのかを価格定義と契約で確認します。手取り額は税金や費用も含めて試算してください。
Q3. 役員借入金と役員貸付金は相殺できますか?
同一当事者間の債権であるか、弁済期など法的要件を満たすか、税務・会計処理が適切かを確認する必要があります。家族分や別法人分が混在していれば単純に相殺できません。弁護士・税理士へ資料を提示して判断します。
Q4. 契約書がない古い入金はどうすればよいですか?
通帳、元帳、当時の議事録、申告書、関係者の説明から実態を確認します。契約書がないことだけで残高を消さず、債権者と金額を確定する手順を専門家と相談します。確認書を作る場合も法的効果に注意します。
Q5. 買い手へいつ開示すべきですか?
ノンネーム段階で個人情報を出す必要は通常ありませんが、財務概要を提示する段階では重要な役員勘定の存在を隠さないことが大切です。詳細資料は秘密保持契約締結後、候補先の検討段階に合わせて開示します。開示時期と範囲はM&A支援者・弁護士と決めます。
Q6. 役員貸付金を譲渡直前にゼロにすべきですか?
説明しやすさは増しますが、処理方法によって税務や会社法上の問題が生じ得ます。現金返済、適法に発生した債権との相殺、その他の方法を比較し、買い手の価格計算と整合させます。帳簿だけをゼロにする処理は避けてください。
Q7. 金融機関へはいつ相談しますか?
借入契約、個人保証、役員借入金返済の資金源によって適切な時期が変わります。早すぎる情報拡散にも遅すぎる承諾未了にも注意し、基本合意や最終契約の予定から逆算します。金融機関対応の経験がある支援者と説明資料を準備します。
Q8. 税理士に何を渡せばよいですか?
決算書、科目内訳、元帳、通帳、契約、役員別の取引一覧、検討中の返済・相殺案、M&Aの価格計算を渡します。「残高を消したい」だけでなく、いつまでに、誰へ、どの資金で整理したいかを伝えると検討が具体化します。法的判断は弁護士とも連携します。
まとめ:残高を消すのではなく、説明できる取引へ戻す
相談前に作る一枚メモ
専門家やM&A支援者へ相談する前に、一枚のメモを用意すると初回確認が進みます。記載するのは、決算書上の科目と残高、実際の相手方、最も古い発生時期、直近一年の増減、契約書と通帳の有無、希望する整理時期、会社が最低限残したい運転資金です。分からない項目は空欄にせず「未確認」と書きます。事実と社長の希望を欄で分ければ、希望に合わせて事実を解釈してしまうことを防げます。
また、整理案ごとの手取り比較では、株式譲渡代金だけを大きく表示しないことが大切です。役員借入金返済、役員貸付金返済、退職金、税金、専門家費用、個人借入の返済、クロージング後に残る債権を同じ表に置きます。最良ケースだけでなく、価格調整が生じた場合と実行が数か月延びた場合も試算します。これにより、提示額は高くても当日使える資金が不足する案や、会社へ負担を残しすぎる案を早い段階で見分けられます。
役員勘定の調査中は、通常の経理処理も改善します。新しい立替は月内に精算する、個人カードの利用をやめる、会社と個人の口座間送金には摘要と承認記録を残す、毎月残高を役員別に確認する、といった小さな運用が有効です。過去の残高がすぐに解消できなくても、増加を止めて管理を始めた事実は、買い手への説明材料になります。
役員借入金・役員貸付金の整理で大切なのは、決算書の見栄えだけを整えることではありません。誰と会社の間に、いつ、何のために生じたお金かを確認し、返済能力、税務、法務、金融機関、株式価値を一つの工程で整えることです。株式代金との二重計上を避け、クロージング当日の送金まで具体化すれば、買い手との認識差を小さくできます。
大阪M&A総合センターでは、会社売却や第三者承継を検討される中小企業オーナーの状況を伺い、準備資料と検討順序を整理します。まだ売却を決めていない段階でも、役員勘定が価格や手取りにどう影響し得るかを把握することには意味があります。譲渡企業企業様は譲渡・事業承継のご相談からお問い合わせください。買収を検討される企業様は買い手企業様向けお問い合わせをご利用いただけます。
ご相談時の情報管理についてはご利用ガイドライン、個人情報の取扱いについてはプライバシーポリシーをご確認ください。本稿は一般的な情報提供を目的とし、特定案件への法務・税務・会計・労務上の助言を構成するものではありません。返済、債権放棄、相殺、役員退職金、相続、金融機関対応の最終判断は、弁護士、税理士、公認会計士、司法書士、社会保険労務士など必要な専門家へ個別にご確認ください。

